衿の付け込みを変えると、着姿はどう変わるのか?!-衿の付込み比較①-

「繰越0、衿の付け込み8分」の着物が仕上がったので

以前仕立てた、「繰越0、衿の付け込み3分」の着物と比較してみました。

注目は、衿の後ろ姿です!

仕立てた寸法について

上の写真に写っている2枚の着物の仕立て上がり寸法です。
全ての寸法は、上記関連記事をご参照ください。

《グレーの着物》
繰越 0
衽下がり (肩)6寸
肩明き 2寸3分
衿の付け込み 3分
袖付け 6寸

《黄色の着物》
繰越 0
衽下がり (肩)6寸
肩明き 2寸3分
衿の付け込み 8分
袖付け 前:6寸7分、後:5寸3分

共通しているのは、繰越・衽下がり・肩明き(切り方も同じ) です。
変えたのは、衿の付け込み 袖付け です。

正面の着姿

左:衿の付け込み3分、右:衿の付け込み8分

衿合わせの角度は、同じになるように気を付けました。

どちらも繰越0の着物ですが
「剣先(けんさき)」の高さが微妙に違います。

首横の衿が立っているのか・寝ているのか、写真ではあまり違いを見てとれませんが、左のグレーの着物の方が、黄色の着物より
少し寝ています。

衿の後姿

左:衿の付け込み3分、右:衿の付け込み8分

大きく変化が見られたのが衿の後姿です。

衿付けのカーブに注目すると
衿の付け込み3分の方は、横長のカーブに
衿の付け込み8分の方は、肩山の方へ上がっていくカーブに

なりました。

例えば、繰越5分、衿の付け込み3分の場合
上の写真のグレーの着物ような衿姿に近い形になります。

これを変えたければ、
繰越5分でも、衿の付け込みを今よりも少し深くすると
黄色い着物のような衿姿に近づけることができると言うことです。

注意することは、「繰越+衿の付け込み」と合わせた寸法が変わると
着心地も変わるので気を付けたいところです。

衿の横姿

左:衿の付け込み3分、右:衿の付け込み8分

着付け用のボディに印をつけ、同じ位置まで衣紋を抜きました。

衣紋の抜き具合を見てみると
同じ位置まで抜いているはずなのに、なんとなくグレーの着物の方が
たくさん抜いているように見えます。

もう一つ注目したいのは、肩山のラインです。

黄色の着物は、グレーの着物よりも
着物の肩山が、身体の肩山に近づきました。

着物の肩山がどこにあるのが正解なのか、ではなく
どこに来てほしいのか、によって
繰越や衿の付け込みを変えてみてはいかがでしょうか。

袖付けの「付け違い」の効果

左:袖付け6寸、右:袖付け 前6寸7分、後5寸3分

背中側に膨らんでいる布に注目します。
グレーの着物は、大きく膨らんでいますが、
黄色の着物は、適量と言えると思います。

着姿で見比べると、より分かりやすいです。(下の画像)

左:袖付け6寸、右:袖付け 前6寸7分、後5寸3分

上の写真、ボディに着せている着物を着用しています。
腕の後ろ側にある布の量が、全く違います。

着物の繰越に対して、それ以上に大きく衣紋を抜くときには
袖付けを前後で変えることは、とても有効だと分かります。

まとめ

衿の付け込みを変えることで、衿の後姿を変えることができました。

綺麗に衣紋を抜くための効果、というよりは
好みの衿姿に変えるために、衿の付け込みを変えるという
一つの手段として活用できると言えます。

衿は、前からの姿も重要ですが
後ろ姿にも、好みの形があり、その形によって持つ印象があると思います。

繰越寸法にこだわることが多いと思いますが
衿の後姿にも注目してみてください。

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この記事を書いた人

KOTARO

現役和裁技能士が「仕立てと着姿」をテーマに、どんな寸法で、どんな仕立てをすると、どんな着姿になるのか、自分自身の身体で検証しています。