羽織 の肩山は、着用時、身体のどの位置にあるのが良いのか。
着物の肩山と同じ位置にあるべきなのか。それとも、全く別の位置にあるべきなのか。
今年は「羽織の寸法」をテーマに、寸法の違う5枚の羽織を仕立ててきました。
年内に残り3枚の羽織を仕立てる予定ですが、現段階で、羽織の肩山についてこんな結論に至りました。

羽織 の肩山はどこにあるのが良いのか
結論からすると、羽織の肩山は身体の肩山にあるのが良い。と現段階では感じている。
厳密に言えば、肩(腕の付け根)ではなく、首の後の付け根(頚椎7番)の延長に羽織の肩山があるのが良い。つまりは、洋服の肩山の位置と同じ位置ということになる。
人間の肩は多くの人が巻き肩になっており、肩(腕の付け根)を基準にしてしまうと、おかしな所に肩山を設定することになる。
首の後ろの付け根=頚椎7番 で決めるのが良いだろう。

なぜ身体の肩山にあるのが良いのか
ここで言う「身体の肩山」とは、頚椎7番の延長を指しているが
なぜこの位置に羽織の肩山を決めるのが良いのか。
理由は、2つ。
①羽織に衣紋を抜くという行為は必要ないため
②前身頃と後身頃の布のバランスを取ることができる。
羽織 に衣紋を抜くと言う行為が必要ないのはなぜか
これまで、羽織もほんの少し衣紋を抜いた状態で着用する方が良いだろうと仮定していたが、ほどんど衣紋を抜かずに着用することを想定して仕立てた方が、裾まわりの窮屈感がなく良い。という結論に至った。
羽織の裾まわりで気になる点は、背中心が飛び出しペンギンのようなシルエットになること。
これを回避するためには、羽織着用時、衣紋が抜けた状態で着用することで回避できる。しかし、この問題点は衣紋を抜くと、前身頃が広がり、前の裾が上がり、胸まわりの布に多くのドレープが現れることだ。それに加え、何よりも気持ちが悪いのが、脇線が斜めになること。着用時の布の歪みは着心地の悪さにつながるためできる限り避けたい。
つまり、羽織を、衣紋を抜いた状態で着用することで、多くの部分に影響が現れてしまうため、
羽織はほとんど衣紋を抜かない状態で着用することが望ましい、と結論する。
前身頃と後身頃の布のバランスとはなにか
羽織は、着物同様に前身頃から後身頃まで1枚の布で繋がっている。肩山で布を継いだりはしない。
前身頃の裾と、後身頃の裾もバランス良く収まるためには、前後の布の長さがほぼ同じであることが単純で美しく理想的と言える。
つまり、身体の肩山に羽織の肩山があることで、その理想が叶う。
まとめ
羽織の肩山を身体の肩山に来るよう仕立てるためには、羽織の繰越寸法を工夫する。
着物の繰越寸法とは切り離し、着用時、どの程度衣紋を抜いてい着ているのかと言う点に着目し、羽織の繰越寸法を割り出す。
人は必ずしも、いつも同じ衣紋の抜き具合で着用している訳ではないだろう。
その時の気分少しずつ変化し、いつも一定に保つ方が難しいと、私自身は感じている。
衣紋の抜き具合が変化すると、羽織のシルエットも必然として崩れていく。
しかし、常に美しい羽織のシルエットを目指すことはしなくてよいだろう。
自然な布の流れ、自然な着崩れは、美しい。
羽織をシルエット良く着こなすために、堅苦しい着付けにならないことを願う。
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