羽織の肩山 は、どこにあるのが正解なのか。
先月仕立てた繰越3分の羽織と組み合わせたのは繰越1寸5分の結城紬。
この組み合わせで注目したいところは、それぞれの肩山の位置。
着物の肩山は、身体の肩の上にあり
羽織の肩山は、身体の肩よりも後ろ、そして当然、着物の肩山よりも後ろにある。
このことから分かる事を記事にまとめてみた。

繰越3分の 羽織の肩山 の位置
この羽織は、繰越が3分しかない。
羽織の繰越の標準寸法は、着物の繰越寸法+2分。
それを考えると、女物の羽織で繰越3分と言うのは、とても小さいことが分かる。
繰越が小さいために、羽織の肩山は
着用と共に背中側へ移動する。
曖昧な表現だが、身体の肩よりもずっと後ろにある。(下の写真参照)

標準寸法で考える 羽織の肩山 の位置
標準寸法とされている羽織の繰越は、着物の繰越+2分。
着物が7分なら、羽織は9分だ。
次は、“衿つけ込み”寸法を含めて考えてみる。
今回は、着物の衿つけ込み寸法を5分
羽織の衿つけ込み寸法を2分として考える。
着物と羽織、それぞれに「繰越+衿つけ込み」の計算をする。
着物:7+5=12
羽織:9+2=11
つまり、着物と羽織の肩山の位置は、
背中心から肩山の距離を測ると、さほど違いのない場所で仕立て上がっていることになる。

繰越3分の羽織を着て感じたこと
- 後ろ身頃の裾が足にくっつく
- 前身頃の裾が上がる
- 着物の衿に羽織の衿がピタッとくっついている気がする
解説
①後ろ身頃の裾が足にくっつく
着物の後身頃に、羽織の後身頃の裾が食い込んでいるかのように感じるほど違和感を感じた。
羽織の後巾を広げれば解決するのかという問題ではなく、確実に繰越の問題だと感じた。
②前身頃の裾が上がる
肩山が背中側へ移動して着ているため前身頃の裾が上がるのは当然だが、繰越が小さく、裾全体が身体の前の方向へ向かっているため、寸法以上に裾が上がっているのを感じた。
③着物の衿に羽織の衿がピタッとくっついている気がする
私の希望が含まれた感想。ここではハッキリをは言えない。
羽織の肩山 はどこにあるのが良いのか
現段階では、この位置が良いというハッキリとしたことは言えない。
しかし、身体の肩山よりは後ろにあったほうが良いということは言える。
これにより、羽織の裾が着物に近づき、羽織の裾まわりのシルエットはスッキリするからだ。

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