羽織の肩山 は、着物の肩山とほぼ同じ位置に重なるよう寸法が決められている。基本の羽織寸法。

羽織の肩山 と着物の肩山の位置は同じ位置なのだろうか?
同じ位置にあることが理想なのだろうか?
もしくは、同じ位置に無い時、それは良くない事なのだろうか?

ここでは、羽織の肩山と着物の肩山の関係について考えたいと思う。

羽織

肩山の位置とは

ここで言う“肩山の位置”とは、着物や羽織を着用した時、身体のどの位置に来ているのか、ということを指している。

着物は、衣紋を抜いて着用する。つまり、着物の肩山の位置は身体の肩よりも背中側にある、となる。
ここで考えることは、着用時、着物の肩山の位置と、羽織の肩山の位置は同じ位置にあるのかどうか、である。

具体的な寸法を当てはめて考えてみた

肩山の位置は、繰越寸法と衿つけ込み寸法によって決まる。
ここでは次のような寸法で考えた。

着物と羽織の寸法

着物:繰越7分、衿つけ込み5分
羽織:繰越9分、衿つけ込み2分

この寸法を決めた理由

・着物の繰越は、現在標準寸法とされている7分を採用。
・着物の衿つけ込みは、肩明きを直線切りした場合に多く使われている5分を採用。
・羽織の繰越は、着物の繰越+2分というのが一般的に多いため9分とした。
・羽織の衿つけ込みは、99%がこの寸法で仕立てられているであろう2分を採用。

つまりは、標準の着物寸法に、最も標準的な割り出し方で導いた羽織の寸法を、具体的な寸法とした。

肩山の位置

下の図が着用時のそれぞれの位置。
この図から分かることは、羽織の肩山と着物の肩山は、ピッタリ同じ位置では無い、と言うことである。

羽織の肩山

肩山のズレについて

上の図を見ると、着物の肩山と羽織の肩山がズレていると言うことが分かる
このズレ巾は1分である。
仕立て屋の目線からすると、“あえてズラしているんだ”という意図を感じる。
なぜなら、羽織の肩山と着物の肩山をピッタリ同じ位置に重なるよう寸法を調整することは簡単なことだからだ。

なぜズラしているのか?

これは着心地と着姿を良くするためだと考えられる。
「羽織の繰越は、少し小さいくらいの方が着やすい」と言う話を聞いたことがある。
この意味は、“羽織は、着物の衿に引っ掛けて羽織る(着る)ので、繰越が大きすぎるとその引っかかる力が弱くなり着心地が悪くなりやすい。だから気持ち小さめの方がうまく着られる”と言う意味ではないかと推測する。

この推測が正しいのかどうか確認するために、今年は、繰越の小さい寸法から順番に羽織を仕立てている。
今年(2022年)の年末ごろにはこの答えが見つかる予定だ。

まとめ

羽織の肩山と着物の肩山は、標準寸法の時点でズレていると言うことが分かった。
つまり、このズレは全く問題が無い。

むしろ重要なのは、“羽織の肩山が身体のどの位置にあるのか”である。

私が着目している点は、次の3つ。
1. 着物の繰越寸法を基準に羽織の繰越寸法を割り出すのは安易な考え方だと言う点
2. 着物の着方に合わせて羽織の繰越寸法を割り出すのが適切だと言う点
3. 羽織の肩山は、ずべての人に対して絶対的に良いと言える位置が存在している点

さて、今年は全部で7枚の羽織を仕立てる予定。
どうぞお楽しみに。

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この記事を書いた人

KOTARO

現役和裁技能士が「仕立てと着姿」をテーマに、どんな寸法で、どんな仕立てをすると、どんな着姿になるのか、自分自身の身体で検証しています。