着物の着姿で重要なのが、衿合わせです。
衿合わせの印象で、イメージが柄っと変わります。
好みの衿合わせのためには、
長じゅばんの寸法がとても大切です。
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今回は、衿の着崩れをできる限り抑えられるよう、
衿が安定する長じゅばんの寸法について考えてみました。

前提条件と考える寸法について
- 胸回りの補正は、胸の谷間が無く、
中央に一つの山を作るような補正とします。 - 仕立てで、脇線ずらしは、考えないものとします。
これから考えていく寸法は、2つです。
- 前巾といくつにするのか?
- 竪衿下がりをいくつにするのか?
例として、今回は以下の着物寸法で考えていきます。
- 前巾 6寸5分
- 後巾 8寸
- 衽下がり (肩)6寸
- 肩明き 2寸3分
※(肩)6寸=肩山から6寸のこと。
着物寸法に対する長じゅばん寸法
上記着物寸法のとき、長じゅばんの前巾の選択肢は、2択です。
Ⓐ6寸5分(着物と同寸)にする
Ⓑ7寸5分(着物前巾+1寸という基本の考え方)にする
ⒶとⒷの間の数字を取ることも可能ですが、
今回は最小と最大寸法のみについて考えます。
ⒶとⒷのどちらかを選択するのですが、
前巾と同時に「竪衿巾」と「竪衿下がり」が変化します。
その違いを見ていきましょう。
Ⓐの場合
竪衿巾は、3寸
竪衿下がりは、(肩)4寸程度が良い
Ⓑの場合
竪衿巾は、2寸
竪衿下がりは、(肩)6寸程度が良い
では、
なぜこの寸法が良いのか、
説明していきたいと思います。

上の写真は、
実寸大で描いた、長じゅばんの衿付けラインです。
画像の一番下にある線が、
褄下の延長線になります。
小さく「身頃の耳」と書いている線が、
前身頃の竪衿付け側の耳です。
剣先から、褄下へ向かって斜めの線を書きました。
Ⓐの場合
長じゅばんの前巾は、着物と同寸の6寸5分でした。
この場合、前身頃の縫い代は、1寸8分になります。
この時の衿付けラインが、
上の写真の一番外側の線です。
次に、
Ⓑの場合
長じゅばんの前巾は、着物前巾+1寸の7寸5分でした。
この場合、前身頃の縫い代は、8分になります。
この時の衿付けラインが、
上の写真の一番下側の線です。
2つの円の間に、
黄色で塗った空間が生まれました。
この空間こそが、衿崩れの原因の一つと考えています。
つまり、
この空間は、衿の中に縫い込んであげることで、
仕立てによる衿の着崩れは軽減できるということです。

今回は、
「衿が安定する長じゅばんの寸法」について、考えてみました。
長じゅばんの寸法は、
仕立てる人によって様々です。
「この着物に合わせて」とお願いしても、
手持ちの長じゅばんと同じ寸法で仕立て上がってくるわけではありません。
ぜひ、着心地の良い長じゅばん寸法を見つけてください。

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