着物の前巾と後巾は、どうやって決めているのか?! – 着物寸法の割り出し方① –

着物を仕立てるときに必要な寸法は、20個
その中でも、ヒップ寸法から割り出す前巾と後巾についてお伝えします。

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着物を仕立てるときに必要な20の寸法

ヒップ寸法とは、どこの寸法なのか?

前巾と後巾を決めるときに、
身体のどこの寸法を測っていますか?

「ヒップ寸法」とよく言いますが、
本当は、どこのとこでしょうか?

私の答えは、
一番出ているところです。

ヒップかもしれないし、太ももかもしれません。
お腹も考慮します。

着物は、一枚の布で、
お腹、お尻、太もも、
身体全体をうまく包んでいます。

洋服を購入するときのヒップ寸法よりも、
少し大きな寸法になるかもしれませんが、
様々は寸法を加味して測ると良いかもしれません。

後巾の割り出し方

ここからは、実際に、
前巾と後巾を、計算で出していきたいと思います。

具体例として、ヒップ95cmで考えていきます。

着物が身体を覆うとき、
「衽、前身頃、後身頃、後身頃」で一周します。

単純に、ヒップ寸法を4等分し、
後巾を出すことができます。

つまり、95cm÷4=23.75cm

この計算方法だと、
脇線が身体の真横にあることになります。

脇線は、
身体の真横よりも少し前側にある方が、
見栄えが良いと考えています。

そこで、後巾を算出する場合、
上の計算式に「+2cm」します。
この2cmは、腰骨の位置に相当します。

(95cm÷4)+2cm=25.75cm

この式のままだど、運動量が加味されていませんので、
さらに「+4cm」します。
運動量というのは、足ったり座ったりするときの変化量、
そして、同時に、長じゅばん等の下着の厚みも含んでいます。

つまり、(95cm÷4)+2cm+4cm=29.75㎝
尺に直すと、後巾7寸8分となります。

巾の割り出し方

今回、衽巾は4寸(15cm)とし、合褄巾は考慮しません。
「衽、前身頃、後身頃、後身頃」で一周しますので、

前巾=ヒップ95cm-(後巾29.75×2)-衽巾15cm
=20.6cm


このままですと運動量が加味されていませんので、
後巾と同様に「+4㎝」をします。

つまり、20.6㎝+4㎝=24.6㎝
尺に直すと、前巾は6寸4分となります。

ここで確認しておきたいことは、
前巾と後巾の差です。

この差を、基本は1寸5分差にするのが良いでしょう。

なぜ1寸5分差が良いのか?

ここからは、
着物の構造が理解できていると良いと思います。

「背縫い3分、肩明き2寸3分」
という、基本の寸法があります。

この時、
背縫い3分と、前巾と後巾の差1寸5分を足すと、
1寸8分になります。

この数字は、
前身頃の反物の耳から、
1寸8分の深さに衽が縫われる

ということになります。

この「1寸8分」という数字が、
ひとつのポイントになります。

着物の構造上、とてもバランスが良く、
仕立てるときも、合理的です。

まとめ

前巾と後巾の差についてお伝えしたところで、
計算で割り出した、前巾6寸4分に戻ります。

後巾は7寸8分でした。

前巾との差を考慮すると、
後巾7寸8分-1寸5分=前巾6寸3分 となります。

計算で出した前巾と、
身巾の差から出した前巾、
2つの寸法を見比べます。

大差がなければ、私の場合
1寸5分差の方を選んでいます。

ヒップ寸法95㎝の場合、
前巾6寸3分、後巾7寸8分、衽巾4寸、が妥当だろう

と、計算から割り出しました。

前巾6寸3分、後巾7寸8分、衽巾4寸の着用画像

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この記事を書いた人

KOTARO

現役和裁技能士が「仕立てと着姿」をテーマに、どんな寸法で、どんな仕立てをすると、どんな着姿になるのか、自分自身の身体で検証しています。