繰越0から分かる、着物の寸法 ー繰越の比較をしましたー

着物の寸法「繰越」は、どんな影響を与えているのか?
繰越0の着物から色々なことが分かりました。

さて、
以前、好みの衿合わせのためには、
長じゅばんの寸法が大切であるということを
お伝えしました。

《関連記事》
長じゅばんの身巾と衽下がりの理想はどこにあるのか?
衿が安定する長じゅばんの寸法

今回は、
「繰越0」の着物を仕立て、着用した感想とともに、
繰越7分の着物と、①衣紋の抜け方、②衿回りについて比較し、
お伝えしていきます。

左:繰越0、右:繰越7分

それでは、本題に入っていきます。
上の写真は、左:繰越0、右:繰越7分、です。

ボディーの肩山に、
長じゅばんの肩山を乗せた着姿です。

当然のことですが、
左側は、男性の着姿そのものに、
右側は、すでに少し衣紋が抜けているような印象です。

次に、
同じ位置まで衣紋を抜きました。
この衣紋を抜いた状態が通常の着姿です。
長じゅばんの肩山は、背中側へずれた状態になっています。

左:繰越0、右:繰越7分

左側(繰越0)の方は、
長じゅばんの肩山が大きく背中側へ移動しています。

右側(繰越7分)の方は、
少し背中側へ移動しています。

– – – – – – – – – –

ここで確認ですが、
繰越寸法の基本は、「どのくらい衣紋を抜くのか」を基準に決めます。

衣紋を抜いた着姿で、
身体の肩山と、衿の中心の延長との、
中間に長じゅばんの肩山があることが、基本です。

この基本の考えからすると、
右側(繰越7分)の方は、
もう少し「繰越寸法をへらしても良い」となります。

《関連記事》
【基本】着物寸法「繰越」の考え方

– – – – – – – – – –

左:繰越0、右:繰越7分

次に、後姿です。

左側(繰越0)の方は、
衿付け側で、肩明きの頂点が少し角ばって見えます。
背中の明き具合は、横に広く、楕円を描くような印象です。

右側(繰越7分)の方は、
衿付け側で、衿の中心から肩山へ向かって、円を描くようなカーブになっています。
背中の明き具合は、少し内側へ倒れこむような印象です。

左:繰越0、右:繰越7分

次に、それぞれの長じゅばんに着物を着せました。

着物もそれぞれ、繰越0と繰越7分です。

左:繰越0、右:繰越7分

後姿です。
印象がかなり違うと思います。

左側(繰越0)の方は、
衿付け側が、横長の弧を描いているので、
大きな衿に見えます。

右側(繰越7分)の方は、
衿付け側が、肩山の方へ向かってカーブを描いているので、
左側に比べると小さく見えます。

左:繰越0、右:繰越7分

最後に、正面の衿合わせです。
注目していただきたいところは、「剣先(けんさき)」の位置です。

左側は、繰越が無い分、
衣紋を抜くために、背中側へ布を移動させているので、
右側に比べ、剣先の位置が上がっています。

先日、この繰越0の着物を着用しました。
剣先の位置がグッと上がった状態で着た時、
着た瞬間にその違いが分かるほど、剣先から肩山までの衿が、
とてもきれいに身体に沿ってくれました。

下の画像が、
「繰越0」の着用画像です。

剣先の位置にも標準寸法があります。
現在の標準寸法は、肩山から6寸。

上の写真は、
どちらも肩山から6寸で仕立ててあります。

「肩山から」とあるのは、
繰越寸法に影響されないためでしょう。

長じゅばん・着物ともに繰越0を着用

今回は、
「繰越0から分かる、着物寸法」として、
衿回りの比較と、剣先の位置についてお伝えしました。

繰越0の剣先の位置を、繰越7分で換算すると、
肩山から5寸3分という寸法でした。

私の長じゅばんの剣先位置が、
肩山から4寸5分なので、着物で5寸3分となっても、
特に問題ないように思えますが、

繰越7分の着物で、剣先をグッと上げると、
同じように衿は綺麗になるのか、また検証してみたい課題です。

《参考画像》左:繰越0、右:繰越7分の正面画像です


「着姿と寸法の追究」では、
容易に予想のつくことでも、【体感する事】をモットーにしています。
引き続き、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

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衣紋の抜き方と衿合わせの関係は、仕立てでコントロールできる。長じゅばん寸法の決め方

同じ長襦袢を使い、衣紋の抜き方を変えて、
「衿合わせと衣紋の関係」を検証しました。

使用した長襦袢は、繰越7分の一般的な仕立ての物。
衿合わせは、同じ角度にします。

衣紋を抜かず、長襦袢の肩山を、
身体の肩山に乗せた着付けをしました。(上の写真)

首横の衿が立ちます。
角度は約143.8度。

衣紋をたくさん抜いた着付けをしました。(上の写真)
今回は分かりやすいように、多めに衣紋を抜いています。

首横の衿が寝ます。
角度にすると、約164度。

衣紋を抜かずに着つけた場合と比べると、
約20度の差があります。

この差はかなり大きな差だと感じていますが、
いかがでしょうか。

左:衣紋を詰めた着付け、右:衣紋をたくさん抜いた着付け

衿合わせの角度は同じでも、
印象は全く違います。

衿を立てたい時は、簡単。
繰越寸法は標準8分のまま、衣紋を詰めて着れば、立ちます。

衿を寝かせたい時は、繰越寸法を小さく仕立て、
着付けで衣紋を抜いて、寝かせます。

左:衣紋を詰めた着付け、右:衣紋をたくさん抜いた着付け

衣紋の抜き具合と、衿合わせの関係は、
繰越寸法を変えることでコントロールできると
、私はしています。

今回の検証から分かることは、
首横の衿の角度は、衣紋を抜くほど、衿は寝る、ということです。

衿合わせを変えた場合、繰越寸法を変えた場合、仕立て方を変えた場合、
さまざまな場合がありますが、別途検証が必要だと思います。


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繰越寸法を小さくする最大の理由ー着物の寸法と着姿ー

繰越を少なくして、
衣紋を大目に抜く最大の特徴は、
「首横で、衿が寝る」事ではないでしょうか。

《関連記事》
着物寸法:繰越寸法が変わると着姿はどう変わるのか?!繰越寸法の比較

左:繰越0、右:繰越7分

この写真では、あまり差がない様に見えますが、
長襦袢の比較写真だと違いが分かります。

角度にすると、
繰越0の方が約159度、
繰越7分方は、約155度。

比較すると6度の差がありました。

左:繰越0、右:繰越7分

今回の比較は、
胸を覆う様な衿合わせにし、
どちらも、同じ位置を通るよう工夫しました。

衿合わせの好みが決まり、
衣紋をどのくらい抜きたいのかを決め、それに合わせて、
理想の繰越寸法を出すことが出来ます。

《関連記事》
着物寸法【基本】繰越の考え方

左:繰越0、右:繰越7分

着物の寸法について、
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寸法の基礎から、理想寸法の出し方、そして、
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着物寸法:繰越寸法が変わると着姿はどう変わるのか?!繰越寸法の比較

着物寸法の「繰越」は、
どのような効果があるのか比較してみました。

着物寸法としての比較ですが、
長襦袢で十分比較可能かと思いますので、
今回は、長襦袢を使用した比較写真を載せました。

■比較条件
・衿合わせは、同じ角度にすること
・衣紋を抜く量は、同じ量にすること


■比較寸法
・繰越0の半襦袢
・繰越7の長じゅばん

※理想は同じ長じゅばんでの比較ですが、今回は半襦袢と長じゅばんでの比較をしました。厳密には、仕立て寸法が少し違うところもありますが、今回の比較には、あまり影響が無いという判断です。

《関連記事》
着物寸法:繰越0と繰越7分では何が変わるのか?比較をしました。

左:繰越0、右:繰越7分

上の写真は、
身体の肩山に、長襦袢の肩山を乗せた写真です。

もちろんのことですが、
繰越0は、男物と同じになるので、男っぽい着姿になっています。

繰越7分の方は、
長襦袢の肩山から7分背中側から衿を付ける(厳密には違いますが)ので、
この時点で少し衣紋が抜けた様な着姿になります。

繰越寸法とは、何か良く分かる画像かと思います。

左:繰越0、右:繰越7分

背中の同じ位置まで、衣紋を縫いた写真です。
基本の着方では、
長じゅばんの肩山は、ボディーの肩山よりも、
背中側へずらした着方です。つまり、衣紋を抜いている状態になります。
今回の検証も、基本の着方で進めていきます。

長じゅばんの肩山に注目します。
ボディーの肩山からどのくらい移動しているのかを比べると、
全く違う位置にあることとが分かります。

左:繰越0、右:繰越7分

後ろから見ると、衿の形に違いがあります。
衿付けのカーブに注目してみます。
どのような弧を描いているのかを比べると違いが見えました。

繰越0では、背中心から肩明きに向かって、繰越寸法が無いので、
横長の弧を描いています。

一方、繰越7分の方は、
背中心から肩山方向へ向かって、円を描くような弧になっています。

「繰越0の方が、衿が小さくまとまった着姿になるのではないか」
と想像していましたが、
全く逆の展開になりました。

比較画像では、
繰越7分の方が、衣紋を抜いた時に見える首の面積が小さく、
より衿がコンパクトに見えます。

左:繰越0、右:繰越7分

最後に、前から見た衿合わせの比較画像です。
今回の比較では、衿合わせが同じ位置になるよう工夫をしました。

衿合わせの角度が同じ、そして、衣紋の抜く量も同じ
で、比較しています。

この比較画像から分かることは、
首横での衿の角度です。

どのくらい衿を寝かせた衿合わせができるのか、
ということです。

比較画像から分かるように、
繰越0の方が、繰越7分に比べて、
衿を寝かせた着姿を作ることができる、と言えます。

角度を測ったところ、
約10度の差がありました。
数字にすると、たった10度ですが、
見た目の差は明らかです。

繰越寸法の標準は、7分、もしくは、8分ですが、
お好みによって、3分、5分、もしくは、1寸などに変えても良いかもしれません。

着物寸法【基本】繰越の考え方

着付けで「衣紋を抜く」とありますが、
衣紋は、着付けと仕立ての両方で抜きます。
その仕立ての部分を担っているのが「繰越」となります。

《関連記事》
着物寸法、繰越を減らす最大の理由
着物寸法、「繰越」を0と7分で比較してみました。

今回は、
繰越7分の長襦袢で、解説したいと思います。
※繰越寸法の標準は、7分、もしくは、8分です。

↑適度に衣紋を抜いて、着物用ボディーに着せました。

ボディーの肩山に黒色のテープが貼ってあるのが透けて見えると思います。
また、長じゅばんの肩山は、布の折り目が見えます。

下の画像で、それぞれのラインを説明します。

黄色い線:ボディーの肩山
青色の線:長襦袢の肩山
赤色の線:衿の中心の延長線

私の場合、繰越寸法の基本は、
次のように定義しています。

「身体の肩山と、衿付けの延長との中間に、長じゅばんの肩山が来ること。」
つまり、
「黄色の線と、赤色の線の中間に、青色の線がある。ということです。

上の写真の場合、
長襦袢の肩山が、やや身体の肩山よりにあるので、
「もう少し繰越寸法を減らしても良い」かもしれないという見解です。

「まぁこのくらいならいいだろう」とこのままでも良し。
「もっと肩山を後ろへ持って行きたいから繰越を減らす」も良し。
「衣紋は繰越のみで抜きたいから繰越を増やす」も良し。

好みの衿の形が、どの繰越だと実現するのか。
ぜひ探ってみてください。