着物の 内あげ はいくつ必要なのか。プロの仕立て屋しか気にしないマニアックな知識。

着物には 内あげ という部分があることをご存知でしょうか。
この部分は身丈直しの時、とても重要な働きをしてくれます。

本来着物は仕立て直しをし、何度も何度も着用する目的で考えられています。
内あげ にどのくらい布が入っているのか で親から子へ着物を引き継ぐとき、身丈を長くすることが可能です。

今回は、その内あげにどのくらいの布を入れるのが適当なのか を考えてみました。

内あげ とは

見八ツ口の下あたりにある布の縫込みを 内あげ (うちあげ)と呼ぶ。

参考資料
KOTARO所有ダウンロード資料「着物の名称」参照
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内あげ
後身頃の中ほどに内あげの縫い目が見える。

内あげ に入れる布の量

私は、「基本3寸程度」と習ってた。
柄合わせの都合、将来の仕立て直し事情、お客様のご希望など
時と場合によって大きく異なる数字の一つ。

「基本3寸程度」の意味

なぜ3寸程度なのか。
考えられる理由の一つは、親子で着物引き継ぐ場合の身長差。

内あげは、身丈を変えて仕立てる時に必要となる。
親より子が高身長だった場合、内あげに入っている布を出し、身丈を長く仕立てる。

重要なのは、親と子でどの程度身長差が生まれるのか。
親子で背格好が似ている、身長がだいたい同じくらい、など
私たち自身、身長が遺伝的な部分が大きいことは身をもって感じるところだろう。

具体的に、母親の身長が165㎝だった場合
娘の身長が175㎝までは「3寸程度」の内あげがあれば仕立て替えが可能である、ということを意味している。(※3寸≒11㎝)
内あげには「最大6寸程度」まで内あげを入れる場合がある。
その場合、身長185㎝まで仕立て替えが可能となる。(※6寸≒23㎝)

まとめ

内あげ という普段目にすることのない部分にも「仕立て替え」を可能にする工夫がされている。
内あげ は適当な量の布を入れることが必要だが、入れすぎると着用時に布が重なり、おはしょりの布を含めると、腰回りに多くの布を纏うことになる。

将来直すかもしれない身丈の想定と、現在の着用加減との兼ね合いを上手く取る必要があると感じた。

《あどがき》
身長が150㎝程度の女性より、「腰回りに布がたくさんありすぎる。これは内あげの布が多いのでは。」と相談を受けた。2人で話合っていた経緯を今回記事にしました。

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この記事を書いた人

KOTARO

現役和裁技能士が「仕立てと着姿」をテーマに、どんな寸法で、どんな仕立てをすると、どんな着姿になるのか、自分自身の身体で検証しています。