日本三大織物のひとつ「 本場結城紬 」の産地見学へ行ってきました。

日本三大織物といえば、「大島」「上布」そして「結城」
着物好きならどれも一枚は持ちたいと思う、一生物になる織りの着物。

どれも工場で機械生産されているのでは無く
現地の人の手で作り出されている点がその魅力のひとつ。

今回は、「 本場結城紬 」が生み出される産地へお邪魔し、現役の職人さんの作業風景を見せていただいた。

本場結城紬
地機

結城紬の産地はその名の通り 茨城県結城市

名古屋から約3時間。
東京駅から東北新幹線に乗り換え、栃木県「小山駅」で下車。
小山駅から車で15分ほど移動するとい茨城県結城市に入る。

下の写真は、帰りに利用した「結城駅」
織元さんに話を聞くと、このあたりの主要駅は「小山駅」なのだそうだ。

小山駅は、栃木県
結城駅は、茨城県

“結城に住んでいると、栃木と茨城を行ったり来たり。生活圏で県をまたいでいる。”
と織元さん。

結城駅
結城駅

見学① 糸つむぎのさと

栃木県小山市にある「糸つむぎのさと」
蚕の一生が分かる拡大模型、養蚕道具などが展示されている施設。
「桑」から「糸つむぎ」に至るまでの作業工程が視覚的にわかるような展示されている。

面白かたのは、写真①の蚕の模型を回すと、蚕の体内を透かせた模型があり繭になる直前の体内の様子が見られること。蚕が繭になる時、排泄物を全て外に出し、内臓まで全て白くなるとこを見ることができた。

写真②、③は、繭を真綿にしているところ。
「袋真綿」という形状にしている。
和裁では「角真綿」という形状のもの使用するのが一般的だと思うが、使用している真綿の形状が違う点、袋真綿を作る工程はとても興味深かった。

糸つむぎのさと
写真①
真綿
写真② 繭を開き、蚕を取り出しているところ
真綿
写真③ 袋状に繭を広げているところ

見学② 大久保染店

結城紬染色部門伝統工芸士である大久保さんの元へ連れて行ってもらった。
実際に染めたばかりの結城紬、藍染の糸、藍窯、草木染についてなど、さまざまな話を伺った。

タイミング良く染めたばかりの糸をみることができた。(写真⑤)
括り糸の感覚が狭くなるほど、染めの難易度は高くなるが、糸で括ってあった部分が綺麗に白く染め抜かれている。

“結城紬は化学染料と決まっている。しかし草木染や藍染という新しい染めの技術を開発することで後世に残っていけばと思っている”と話していたことが印象的だった。

写真④ 大久保さん
結城紬の糸
本場結城紬
写真⑤ 染めたばかりの結城紬の糸
藍染の糸
写真⑥ 藍染の糸

見学③ 紬織物技術支援センター

こちらも栃木県小山市にある「紬織物技術支援センター」
実際に若い方が地機で織っている姿を見せていただいた。
どのくらい大変なことで、何に気をつけながら織っているのかは、実際に織っている人でなければ知り得ない領域というものがあると思っている。研修期間は約1年だと聞いたが、その一年は何よりも濃い一年なのだとうと想像する。また内心では、この技術を私自身が担うことはできない、とハッキリと認識した。この感覚は私にとって新しいもので、“新しい発見”のような感覚を得た。
技術を後世に継承していくことは難しいことだと思うが、心からこの技術が続くことを願う。

本場結城紬
紬織物技術センター
写真⑦ 紬織物技術支援センター
紬織物技術センター
写真⑧ 展示室
紬織物技術センター
写真⑨ 研修室

見学④ 墨付けと絣合わせ

墨付けをしている職人さんの元へ。
墨付け・括り・絣合わせなど複数の工程をひとりの職人さんが担っている。
伺った時は、ちょうど絣合わせをしてる時だった。(写真⑩)

写真⑩は経糸の絣の高さを合わせているところ。
「耳印」という印と設計図を頼りに、高さを合わせていると言うが
どれだけ近づいてココだと教えてもらっても分からなかった。

墨付けの道具を見せていただいた。(写真11)
この道具は職人さんの手作りで、絣の細かさによってこの道具を変えていると言う。

本場結城紬 絣合わせ
写真⑩
墨付け道具
写真11

見学⑤ 地入れ・天日干し

結城市に一軒となった地入れ職人さんの元へ。
とても面白かったのは、“地機は洗い張りをするごとに丈が少しずつ縮み、高機は伸びていく”という話。

反物を裁断し、着物になってしうと地機なのか高機なのかの見分けは難しいが
“ここで張ってみると分かっちゃうんだよね〜”と、とても楽しい職人さん。

地入れをする時は、カラッと晴れた日が良いこと
2人で一組で行う仕事だと言うこと
時間との勝負であること

実際の伸子の扱いが見れたこと、伸子が消耗品であることなど
伝統的な道具という認識から現役の道具として認識を更新することができた。

地入れ
写真12
地入れ
写真13

色々な体験もしました

糸つむぎの体験、括りの体験、地機の体験。
最後写真は地機では右足も使っているという写真。

現役の職人さんを訪ねてみて

今回の結城紬の産地見学では、一つの場所ですべての工程を見せていただくのではなく、その工程を担う職人さんの元へお邪魔させていただく形。これがとても良かった。

織元さんがどのような動きをしているのか
染め屋さん、括り屋さんなど職人さん同士の場所が近いのか遠いのか
実際にどんな場所でどういう形で仕事をしているのか

もしかすると場所や位置関係というのは些細な情報かもしれないが
実際に移動して体感してみると、その織物がどういった道を経て出来上がっているのか
織り上がるまでの工程と相まって理解が深まる。

現役の職人さんの元へ伺うと、ご自宅の敷地内と思われる場所に作業場があり、黙々と仕事をされている。
このような現場を見せていただくことはとても貴重。ただ本を読んでいるだけでは、その職人さんが担う工程に時間の流れを感じることができないが、実際に会って話を聞くと、その工程に時の流れを感じることができる。

今回の産地見学では、ひとつひとつの工程に時間の流れを感じれれらたこと、一つの織物が出来上がるまでの工程に時間の流れを感じられたこと、時間の流れを感じられたことで織物に関する知識を深めることができた点がとても良かった。

本場結城紬体験
地入れの風景

お世話になった方々

この記事を書いた人

KOTARO

現役和裁技能士が「仕立てと着姿」をテーマに、どんな寸法で、どんな仕立てをすると、どんな着姿になるのか、自分自身の身体で検証しています。