シルエットの美しい羽織とは?ー衿についてー


「美しい羽織のシルエット」とは、
どのようなシルエットを想像しますか?

どのような着姿が美しいと感じますか?
羽織を羽織った後の着姿に期待することは何ですか?

私は、次の3つの条件を満たしている物を、
「美しい」と定義しています。

①衿が地に向かって真っすぐに降りているとこ
②裾が地面と平行になっていること
③着物に羽織がくっつきすぎず、離れすぎずの位置にあること



写真で着ている羽織は、
私がまだ和裁を初めて間もない頃、
浴衣しかまだ縫ったことがなかった頃、
仕立ててもらった羽織です。

あの頃は何も知りませんでしたが、
美しく見せるためには、衿がとても重要だと、
後になってから知りました。

ちなみに、羽織丈は、
主流の七分丈よりも少し長めの、
ひざ下丈です。

羽織の丈は、七分丈にこだわらず、
身長によって変えた方が良いと思っています。


さて、本題に戻り、
——————–
①衿が地に向かって真っすぐに降りていること
——————–
について、考えてみたいと思います。

理想の衿は、衿先で広がったり
内側へ入り込んだりしていないことです。
衿先まで、真っすぐに降りていると、
とても美しいのです。

そのためには、どうすると良いのか?

ポイントは、3つです。
・後巾を裾で狭くする
・前巾を成り行きではなく、指定寸法にする
・衿先の縫い込みを深くする


写真の羽織は、
後巾が見八ツ口あたりから裾まで、
同寸で仕立ててあります。

よく見ると、
背中心の裾辺りで布の余りがあります。
この分を脇で縫い込んであげると、
より良いシルエットになります。

そして、次の問題は、
どのくらい縫い込むのか?です。

これは、一概にいくつという寸法が言えません。
いつもの着物姿の上に羽織ってみた感じで、決めていきます。

一つ言えることは、
私の体型で、裾で後巾を2分、前巾を2分、
衿先の縫い込みを通常よりもさらに2分詰めるだけでは、
足りないということです。

これだけは、
アナログな方法で、着姿を見るに限ります。

羽織やコートを着る時期になりました。
ぜひ、いろいろな羽織を見てみてくだしい。
そして、お手持ちの羽織の寸法を測ってみてください。

長くなりましたので、今回はここまでにします。
羽織のシルエットを美しくするポイントは、下の3つでした。

①衿が地に向かって真っすぐに降りているとこ
②裾が地面と平行になっていること
③着物に羽織がくっつきすぎず、離れすぎずの位置にあること


次回は、②について考えてみたいと思います。


寸法について、
より詳しく学びたい方へ

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着物の理想寸法とは、そもそも、どんな寸法を指しているのか?


「基本の寸法講座」では、
基本の寸法を知り ⇒ 理想寸法を導き出す
という方法で、理想寸法をお伝えしています。

すでに理想寸法を知っている方へは、
理想寸法 ⇒ なぜその寸法になっているのかを解説
⇒ 衿周り等について深く解説するオプション話付き

しかし!!
そもそもです。

______________

「理想寸法」とは、
どんな寸法を指すのでしょうか?
______________


《関連記事》
着物寸法【基本】繰越の考え方
【ご案内】着物の理想寸法を自分で見つけられる!着物の寸法講座



言い換えると、「理想寸法」とは、
人それぞれ欲しいと思っている寸法が違うのではないでしょうか。

基本の着姿になる寸法が、理想寸法の人。
舞妓さんのように、衿を詰めて、
衣紋をたくさん抜いている着姿になる寸法が、理想寸法の人。
衣紋はあまり抜かず、衿もシャープな着こなしになる寸法が、理想寸法の人。

例えば、
同じ身長、同じヒップサイズ、同じ年齢層の2人が居たとします。

着物の好みも違えば、好みの着こなしも違うでしょう。

体型は同じでも、好みの違う2人に、
同じ寸法を理想寸法として伝えしても良いのか?

と、なります。


ということは、結局のところ、
「どんな着姿になりたいのか?」
という事が、理想寸法を出す上での最大のポイントになるのです。

そして、このブログのテーマである、「着姿と寸法」は、
理想寸法を出す上で、お役に立てると思います。

《関連記事》
着物寸法:繰越寸法が変わると着姿はどう変わるのか?!繰越寸法の比較
繰越0から分かる、着物の寸法 ー繰越の比較をしましたー
長襦袢の仕立て方:衿付けラインで決まる衿合わせ。



寸法について、
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着物の前巾と後巾は、どうやって決めているのか?!

以前、着物を仕立てるときには20個の寸法が必要である、
と、お伝えしました。

《関連記事》
着物を仕立てるときに必要な20の寸法

今回はその中でも特に、
「着物の前巾と後巾は、どうやって決めているのか?!」
に的を絞ってお伝えしていきます。

まず、前巾と後巾を決めるときに、
身体のどこの寸法を測っていますか?

「ヒップ寸法」とよく言いますが、
本当は、どこのとこでしょうか?

私の答えは、
一番出ているところです。

ヒップかもしれないし、太ももかもしれません。
お腹も考慮します。

着物は、一枚の布で、
お腹、お尻、太もも、
身体全体をうまく包んでいます。

洋服を購入するときのヒップ寸法よりも、
少し大きな寸法になるかもしれませんが、
様々は寸法を加味して測ると良いかもしれません。


ここからは、実際に、
前巾と後巾を、計算で出していきたいと思います。

具体例として、ヒップ95cmで考えていきます。

着物が身体を覆うとき、
「衽、前身頃、後身頃、後身頃」で一周します。

単純に、ヒップ寸法を4等分し、
後巾を出すことができます。

つまり、95cm÷4=23.75cm

この計算方法だと、
脇線が身体の真横にあることになります。

脇線は、
身体の真横よりも少し前側にある方が、
見栄えが良いと考えています。

そこで、後巾を算出する場合、
上の計算式に「+2cm」します。
この2cmは、腰骨の位置に相当します。

(95cm÷4)+2cm=25.75cm

この式のままだど、運動量が加味されていませんので、
さらに「+4cm」します。
運動量というのは、足ったり座ったりするときの変化量、
そして、同時に、長じゅばん等の下着の厚みも含んでいます。

つまり、(95cm÷4)+2cm+4cm=29.75㎝
尺に直すと、後巾7寸8分となります。


次に、前巾を割り出していきます。

今回、衽巾は4寸(15cm)とし、合褄巾は考慮しません。
「衽、前身頃、後身頃、後身頃」で一周しますので、

前巾=ヒップ95cm-(後巾29.75×2)-衽巾15cm
  =20.6cm


このままですと運動量が加味されていませんので、
後巾と同様に「+4㎝」をします。

つまり、20.6㎝+4㎝=24.6㎝
尺に直すと、前巾は6寸4分となります。

ここで確認しておきたいことは、
前巾と後巾の差です。

この差を、基本は1寸5分差にするのが良いでしょう。

– – – – – – – – – –

なぜ1寸5分差がなのか?

– – – – – – – – – –

ここからは、
着物の構造が理解できていると良いと思います。

「背縫い3分、肩明き2寸3分」
という、基本の寸法があります。

この時、
背縫い3分と、前巾と後巾の差1寸5分を足すと、
1寸8分になります。

この数字は、
前身頃の反物の耳から、
1寸8分の深さに衽が縫われる

ということになります。

この「1寸8分」という数字が、
ひとつのポイントになります。

着物の構造上、とてもバランスが良く、
仕立てるときも、合理的です。


前巾と後巾の差についてお伝えしたところで、
計算で割り出した、前巾6寸4分に戻ります。

後巾は7寸8分でした。

前巾との差を考慮すると、
後巾7寸8分-1寸5分=前巾6寸3分 となります。

計算で出した前巾と、
身巾の差から出した前巾、
2つの寸法を見比べます。

大差がなければ、私の場合、
1寸5分差の方を適用します。


ということで、
ヒップ寸法95㎝の場合、
前巾6寸3分、後巾7寸8分、衽巾4寸、が妥当だろう
と、計算から割り出しました。

計算からの身巾の割り出しができたら、
その寸法を参考に、次は、

実際の着物を着用し、
アナログな手法で寸法を割り出します。

計算から割り出した寸法と比較をし、
より理想の着姿に近い寸法を導き出すと良いかと思います。


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衿が安定する長じゅばんの寸法とは?!

着物の着姿で重要なのが、衿合わせです。
衿合わせの印象で、イメージが柄っと変わります。

好みの衿合わせのためには、
長じゅばんの寸法がとても大切です。

《関連記事》
長じゅばんの身巾と竪衿下がりの理想はどこにあるのか?

今回は、衿の着崩れをできる限り抑えられるよう、
えりが安定する長じゅばんの寸法について考えていきたいと思います。

それでは、本題に入っていきます。

まずは、前提条件です。

  • 胸回りの補正は、胸の谷間が無く、
    中央に一つの山を作るような補正とします。
  • 仕立てで、脇線ずらしは、考えないものとします。

これから考えていく寸法は、2つです。

  1. 前巾といくつにするのか?
  2. 竪衿下がりをいくつにするのか?

例として、今回は以下の着物寸法で考えていきます。

  • 前巾 6寸5分
  • 後巾 8寸
  • 衽下がり (肩)6寸
  • 肩明き 2寸3分
    ※(肩)6寸=肩山から6寸のこと。

この場合、長じゅばんの前巾の選択肢は、2択です。

Ⓐ6寸5分(着物と同寸)にする
Ⓑ7寸5分(着物前巾+1寸という基本の考え方)にする

ⒶとⒷの間の数字を取ることも可能ですが、
今回は最小と最大寸法のみについて考えます。

ⒶとⒷのどちらかを選択するのですが、
前巾と同時に「竪衿巾」と「竪衿下がり」が変化します。
その違いを見ていきましょう。

Ⓐの場合
竪衿巾は、3寸
竪衿下がりは、(肩)4寸程度が良い

Ⓑの場合
竪衿巾は、2寸
竪衿下がりは、(肩)6寸程度が良い


では、
なぜこの寸法が良いのか、
説明していきたいと思います。

肩明き:2寸3分、背縫い:3分

上の写真は、
実寸大で描いた、長じゅばんの衿付けラインです。

画像の一番下にある線が、
褄下の延長線になります。

小さく「身頃の耳」と書いている線が、
前身頃の竪衿付け側の耳です。

剣先から、褄下へ向かって斜めの線を書きました。

Ⓐの場合
長じゅばんの前巾は、着物と同寸の6寸5分でした。
この場合、前身頃の縫い代は、1寸8分になります。

この時の衿付けラインが、
上の写真の一番外側の線です。

次に、
Ⓑの場合
長じゅばんの前巾は、着物前巾+1寸の7寸5分でした。
この場合、前身頃の縫い代は、8分になります。

この時の衿付けラインが、
上の写真の一番下側の線です。

2つの円の間に、
黄色で塗った空間が生まれました。

この空間こそが、衿崩れの原因の一つと考えています。

つまり、
この空間は、衿の中に縫い込んであげることで、
仕立てによる衿の着崩れは軽減できるということです。

今回は、
「衿が安定する長じゅばんの寸法」について、考えてみました。

長じゅばんの寸法は、
仕立てる人によって様々です。

「この着物に合わせて」とお願いしても、
手持ちの長じゅばんと同じ寸法で仕立て上がってくるわけではありません。

ぜひ、着心地の良い長じゅばん寸法を見つけてください。


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ご自身で算出した理想寸法の確認までできる、
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繰越0から分かる、着物の寸法 ー繰越の比較をしましたー

着物の寸法「繰越」は、どんな影響を与えているのか?
繰越0の着物から色々なことが分かりました。

さて、
以前、好みの衿合わせのためには、
長じゅばんの寸法が大切であるということを
お伝えしました。

《関連記事》
長じゅばんの身巾と衽下がりの理想はどこにあるのか?
衿が安定する長じゅばんの寸法

今回は、
「繰越0」の着物を仕立て、着用した感想とともに、
繰越7分の着物と、①衣紋の抜け方、②衿回りについて比較し、
お伝えしていきます。

左:繰越0、右:繰越7分

それでは、本題に入っていきます。
上の写真は、左:繰越0、右:繰越7分、です。

ボディーの肩山に、
長じゅばんの肩山を乗せた着姿です。

当然のことですが、
左側は、男性の着姿そのものに、
右側は、すでに少し衣紋が抜けているような印象です。

次に、
同じ位置まで衣紋を抜きました。
この衣紋を抜いた状態が通常の着姿です。
長じゅばんの肩山は、背中側へずれた状態になっています。

左:繰越0、右:繰越7分

左側(繰越0)の方は、
長じゅばんの肩山が大きく背中側へ移動しています。

右側(繰越7分)の方は、
少し背中側へ移動しています。

– – – – – – – – – –

ここで確認ですが、
繰越寸法の基本は、「どのくらい衣紋を抜くのか」を基準に決めます。

衣紋を抜いた着姿で、
身体の肩山と、衿の中心の延長との、
中間に長じゅばんの肩山があることが、基本です。

この基本の考えからすると、
右側(繰越7分)の方は、
もう少し「繰越寸法をへらしても良い」となります。

《関連記事》
【基本】着物寸法「繰越」の考え方

– – – – – – – – – –

左:繰越0、右:繰越7分

次に、後姿です。

左側(繰越0)の方は、
衿付け側で、肩明きの頂点が少し角ばって見えます。
背中の明き具合は、横に広く、楕円を描くような印象です。

右側(繰越7分)の方は、
衿付け側で、衿の中心から肩山へ向かって、円を描くようなカーブになっています。
背中の明き具合は、少し内側へ倒れこむような印象です。

左:繰越0、右:繰越7分

次に、それぞれの長じゅばんに着物を着せました。

着物もそれぞれ、繰越0と繰越7分です。

左:繰越0、右:繰越7分

後姿です。
印象がかなり違うと思います。

左側(繰越0)の方は、
衿付け側が、横長の弧を描いているので、
大きな衿に見えます。

右側(繰越7分)の方は、
衿付け側が、肩山の方へ向かってカーブを描いているので、
左側に比べると小さく見えます。

左:繰越0、右:繰越7分

最後に、正面の衿合わせです。
注目していただきたいところは、「剣先(けんさき)」の位置です。

左側は、繰越が無い分、
衣紋を抜くために、背中側へ布を移動させているので、
右側に比べ、剣先の位置が上がっています。

先日、この繰越0の着物を着用しました。
剣先の位置がグッと上がった状態で着た時、
着た瞬間にその違いが分かるほど、剣先から肩山までの衿が、
とてもきれいに身体に沿ってくれました。

下の画像が、
「繰越0」の着用画像です。

剣先の位置にも標準寸法があります。
現在の標準寸法は、肩山から6寸。

上の写真は、
どちらも肩山から6寸で仕立ててあります。

「肩山から」とあるのは、
繰越寸法に影響されないためでしょう。

長じゅばん・着物ともに繰越0を着用

今回は、
「繰越0から分かる、着物寸法」として、
衿回りの比較と、剣先の位置についてお伝えしました。

繰越0の剣先の位置を、繰越7分で換算すると、
肩山から5寸3分という寸法でした。

私の長じゅばんの剣先位置が、
肩山から4寸5分なので、着物で5寸3分となっても、
特に問題ないように思えますが、

繰越7分の着物で、剣先をグッと上げると、
同じように衿は綺麗になるのか、また検証してみたい課題です。

《参考画像》左:繰越0、右:繰越7分の正面画像です


「着姿と寸法の追究」では、
容易に予想のつくことでも、【体感する事】をモットーにしています。
引き続き、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

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衣紋の抜き方と衿合わせの関係は、仕立てでコントロールできる。長じゅばん寸法の決め方

同じ長襦袢を使い、衣紋の抜き方を変えて、
「衿合わせと衣紋の関係」を検証しました。

使用した長襦袢は、繰越7分の一般的な仕立ての物。
衿合わせは、同じ角度にします。

衣紋を抜かず、長襦袢の肩山を、
身体の肩山に乗せた着付けをしました。(上の写真)

首横の衿が立ちます。
角度は約143.8度。

衣紋をたくさん抜いた着付けをしました。(上の写真)
今回は分かりやすいように、多めに衣紋を抜いています。

首横の衿が寝ます。
角度にすると、約164度。

衣紋を抜かずに着つけた場合と比べると、
約20度の差があります。

この差はかなり大きな差だと感じていますが、
いかがでしょうか。

左:衣紋を詰めた着付け、右:衣紋をたくさん抜いた着付け

衿合わせの角度は同じでも、
印象は全く違います。

衿を立てたい時は、簡単。
繰越寸法は標準8分のまま、衣紋を詰めて着れば、立ちます。

衿を寝かせたい時は、繰越寸法を小さく仕立て、
着付けで衣紋を抜いて、寝かせます。

左:衣紋を詰めた着付け、右:衣紋をたくさん抜いた着付け

衣紋の抜き具合と、衿合わせの関係は、
繰越寸法を変えることでコントロールできると
、私はしています。

今回の検証から分かることは、
首横の衿の角度は、衣紋を抜くほど、衿は寝る、ということです。

衿合わせを変えた場合、繰越寸法を変えた場合、仕立て方を変えた場合、
さまざまな場合がありますが、別途検証が必要だと思います。


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繰越寸法を小さくする最大の理由ー着物の寸法と着姿ー

繰越を少なくして、
衣紋を大目に抜く最大の特徴は、
「首横で、衿が寝る」事ではないでしょうか。

《関連記事》
着物寸法:繰越寸法が変わると着姿はどう変わるのか?!繰越寸法の比較

左:繰越0、右:繰越7分

この写真では、あまり差がない様に見えますが、
長襦袢の比較写真だと違いが分かります。

角度にすると、
繰越0の方が約159度、
繰越7分方は、約155度。

比較すると6度の差がありました。

左:繰越0、右:繰越7分

今回の比較は、
胸を覆う様な衿合わせにし、
どちらも、同じ位置を通るよう工夫しました。

衿合わせの好みが決まり、
衣紋をどのくらい抜きたいのかを決め、それに合わせて、
理想の繰越寸法を出すことが出来ます。

《関連記事》
着物寸法【基本】繰越の考え方

左:繰越0、右:繰越7分

着物の寸法について、
より詳しく学びたい方は、
寸法の基礎から、理想寸法の出し方、そして、
算出した寸法が本当に良かったのか確認までできる、
「着物の寸法講座」があります。


着物寸法:繰越寸法が変わると着姿はどう変わるのか?!繰越寸法の比較

着物寸法の「繰越」は、
どのような効果があるのか比較してみました。

着物寸法としての比較ですが、
長襦袢で十分比較可能かと思いますので、
今回は、長襦袢を使用した比較写真を載せました。

■比較条件
・衿合わせは、同じ角度にすること
・衣紋を抜く量は、同じ量にすること


■比較寸法
・繰越0の半襦袢
・繰越7の長じゅばん

※理想は同じ長じゅばんでの比較ですが、今回は半襦袢と長じゅばんでの比較をしました。厳密には、仕立て寸法が少し違うところもありますが、今回の比較には、あまり影響が無いという判断です。

《関連記事》
着物寸法:繰越0と繰越7分では何が変わるのか?比較をしました。

左:繰越0、右:繰越7分

上の写真は、
身体の肩山に、長襦袢の肩山を乗せた写真です。

もちろんのことですが、
繰越0は、男物と同じになるので、男っぽい着姿になっています。

繰越7分の方は、
長襦袢の肩山から7分背中側から衿を付ける(厳密には違いますが)ので、
この時点で少し衣紋が抜けた様な着姿になります。

繰越寸法とは、何か良く分かる画像かと思います。

左:繰越0、右:繰越7分

背中の同じ位置まで、衣紋を縫いた写真です。
基本の着方では、
長じゅばんの肩山は、ボディーの肩山よりも、
背中側へずらした着方です。つまり、衣紋を抜いている状態になります。
今回の検証も、基本の着方で進めていきます。

長じゅばんの肩山に注目します。
ボディーの肩山からどのくらい移動しているのかを比べると、
全く違う位置にあることとが分かります。

左:繰越0、右:繰越7分

後ろから見ると、衿の形に違いがあります。
衿付けのカーブに注目してみます。
どのような弧を描いているのかを比べると違いが見えました。

繰越0では、背中心から肩明きに向かって、繰越寸法が無いので、
横長の弧を描いています。

一方、繰越7分の方は、
背中心から肩山方向へ向かって、円を描くような弧になっています。

「繰越0の方が、衿が小さくまとまった着姿になるのではないか」
と想像していましたが、
全く逆の展開になりました。

比較画像では、
繰越7分の方が、衣紋を抜いた時に見える首の面積が小さく、
より衿がコンパクトに見えます。

左:繰越0、右:繰越7分

最後に、前から見た衿合わせの比較画像です。
今回の比較では、衿合わせが同じ位置になるよう工夫をしました。

衿合わせの角度が同じ、そして、衣紋の抜く量も同じ
で、比較しています。

この比較画像から分かることは、
首横での衿の角度です。

どのくらい衿を寝かせた衿合わせができるのか、
ということです。

比較画像から分かるように、
繰越0の方が、繰越7分に比べて、
衿を寝かせた着姿を作ることができる、と言えます。

角度を測ったところ、
約10度の差がありました。
数字にすると、たった10度ですが、
見た目の差は明らかです。

繰越寸法の標準は、7分、もしくは、8分ですが、
お好みによって、3分、5分、もしくは、1寸などに変えても良いかもしれません。

着物寸法【基本】繰越の考え方

着付けで「衣紋を抜く」とありますが、
衣紋は、着付けと仕立ての両方で抜きます。
その仕立ての部分を担っているのが「繰越」となります。

《関連記事》
着物寸法、繰越を減らす最大の理由
着物寸法、「繰越」を0と7分で比較してみました。

今回は、
繰越7分の長襦袢で、解説したいと思います。
※繰越寸法の標準は、7分、もしくは、8分です。

↑適度に衣紋を抜いて、着物用ボディーに着せました。

ボディーの肩山に黒色のテープが貼ってあるのが透けて見えると思います。
また、長じゅばんの肩山は、布の折り目が見えます。

下の画像で、それぞれのラインを説明します。

黄色い線:ボディーの肩山
青色の線:長襦袢の肩山
赤色の線:衿の中心の延長線

私の場合、繰越寸法の基本は、
次のように定義しています。

「身体の肩山と、衿付けの延長との中間に、長じゅばんの肩山が来ること。」
つまり、
「黄色の線と、赤色の線の中間に、青色の線がある。ということです。

上の写真の場合、
長襦袢の肩山が、やや身体の肩山よりにあるので、
「もう少し繰越寸法を減らしても良い」かもしれないという見解です。

「まぁこのくらいならいいだろう」とこのままでも良し。
「もっと肩山を後ろへ持って行きたいから繰越を減らす」も良し。
「衣紋は繰越のみで抜きたいから繰越を増やす」も良し。

好みの衿の形が、どの繰越だと実現するのか。
ぜひ探ってみてください。

着物を仕立てるときに必要な20の寸法

着物を仕立てるとき、
いくつの寸法が必要なのかご存知でしょうか。

洋裁に比べると、
必要寸法はとても少ないですが、
それでも、20個の寸法が必要になります。

では、
実際に必要となる寸法にはどんな種類があるのか、
細かく解説していきます。

20個の寸法を下に書き出しました。
(用語の説明は割愛させていただきます。)

  1. 身丈
  2. 袖巾
  3. 肩巾
  4. 袖丈
  5. 袖口
  6. 袖付け
  7. 身八ツ口
  8. 袖丸
  9. 前巾
  10. 後巾
  11. 抱巾
  12. 衽巾
  13. 合褄巾
  14. 褄下
  15. 繰越
  16. 衽下がり
  17. 衿付込み
  18. 剣先縫い込み
  19. 肩明き

全ての寸法を決めなければ、 仕立てを進められないのですが、

例えば、仕立てをお願いするとき、
身丈、裄、前巾、後巾、繰越の5つを指定したとします。

すると、その他の15個の寸法は 、
「呉服屋さんの形式に準ずる」もしくは「仕立て屋さんにお任せする」
のどちらかになります。

「呉服屋の形式に準ずる」場合、
地域差など、いろいろな違いがありとても面白いのですが、
こちらのお話は、またの機会にさせてください。

では、
「仕立て屋さんにお任せする」場合、
私が、どのような寸法を使っているのかをお伝えしていきます。

■前提条件
※寸法は、女物の着物寸法です。
※全て指定が無い場合の寸法です。
※体型により、寸法は変動します。
※長襦袢との兼ね合いは無視します。

  1. 身丈:身長
  2. 裄:採寸による
  3. 袖巾
  4. 肩巾
  5. 袖丈:1尺3寸
  6. 袖口:6寸
  7. 袖付け:6寸
  8. 身八ツ口:4寸
  9. 袖丸:5分
  10. 前巾
  11. 後巾
  12. 抱巾:前巾と同寸
  13. 衽巾:4寸
  14. 合褄巾:3寸7分
  15. 褄下:身丈の半分
  16. 繰越:7分
  17. 衽下がり:肩山から6寸
  18. 衿付込み:3分
  19. 剣先縫い込み:2寸
  20. 肩明き:2寸3分

ここでは、4つの寸法に注目していと思います。

  • 抱巾
  • 合褄巾
  • 衿付込み
  • 肩明き

この4つの寸法は、

  • 地域性
  • 呉服屋さんの方針
  • 仕立て屋さんがどこで修業してきたのか

によって変わります。

どのような違いがあるのか、 詳しく見ていきましょう。

《抱巾》
  〇抱き巾をつける場合
  基本は、【前巾-3分】です。
  注意したいことは、 ここでいう「前巾」は、裾の巾ではなく、
  褄下あたりの巾であることです。
  裾での巾と褄下あたりでの巾が、同寸ではない場合もあります
  
  〇抱巾を付けない場合
  「抱巾通し(とおし)」と言い、裾から剣先まで同じ巾で仕立てます。

《合褄巾》
  〇合褄巾を付ける場合
  基本は、【衽巾-3分】です。

  〇合褄巾をつけない場合
  「合褄巾通し(とおし)」と言い、衽巾は、裾から褄下丈まで同寸になります。

《衿付込み》
  大きく別けて、3分の場合5分の場合があります。
  肩明きの切り方によって変わる場合が多いので、 次の肩明きの項目で説明します。

《肩明き》
  「どのように肩明きを切るのか?」です。
  〇直線
  〇カーブ
  直線で切る場合は、衿付込みを5分にする場合が多く、
  カーブで切る場合は、衿付込みを3分にする場合が多いです。
  また、カーブで切る場合、どのくらいの丸みで切るのかも、
  呉服屋さんによって、仕立て屋さんによって、変わってきます。
  直線で切る場合と、カーブで切る場合の違いについて、
  いろいろな検証ができるので、 別のニュースレターでお伝えします。

ざっと寸法について見てきましたが、
初めて知る方にとっては、かなりのボリュームだったかもしれません。

寸法の用語で、初めて聞く言葉もあったかもしれません。
今回お伝えした、注目したい4つの寸法は、
当たり前のことかもしれませんが、
地域によって、呉服屋さんによって、仕立て屋さんによって、
少しずつ微妙に違います。

この微妙な違いが、着姿や着心地に影響してくる
と考えています。

どのような体型の方に、どのような寸法をご提供するのか、
まずは、自分の身体で試し、「着姿と寸法」について
突き詰めていきたいと思います。

お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

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