「寸法=体型」では無く、「寸法=着用姿」である。KOTAROが考える着物の寸法。

着物の寸法を決める時、身長・ヒップ・腕の長さ、と自分やお客様の身体のサイズを必ず測ると思います。この測ったサイズから割り出した着物寸法は「寸法=体型」かもしれません。しかし、着物に着慣れてくるとこの寸法が必ずしも良い寸法とは言えないと考えています。

寸法=体型 を考える

「寸法=体型」であるならば、同じ身長・同じヒップサイズ・同じ腕の長さの人はみんな同じ寸法になるという事になる。

例えば、
20歳・女性・身長160cm・ヒップ95cm・着物歴1年の人と
75歳・女性・身長160cm・ヒップ95cm・着物歴50年の人について考えてみる。

20歳・女性の場合
・着物歴1年であればまだ着方が定まっていないかもしれない
・好みの着方をまだ探っている最中かもしれない
→20歳という年齢を考慮して繰越は7分程度つけておこう
→20歳という年齢を考慮して袖丈は標準よりも長めにご提案するのもありだろう
→着方が定まるまでは身巾は標準寸法にしておこう

75歳・女性の場合
・着物の着方は定まっているだろう
・好みの着方があるだろう
→衣紋を余り抜かないのなら繰越を小さくしよう
→ゆったりした着心地がお好みなら身巾を少し大きめにしよう
→袖丈はお手持ちの着物に合わせよう

この様に、同じ身長・同じヒップサイズだとしても、年齢や着物歴、着方などにより寸法は変わり、意識する事なく自然と私たちは寸法を変えている。KOTAROだけがこの様に考えているのではなく、着物歴が深くなるほどこの様に考えが変わってくるものだと実感している。

つまり、「寸法=体型」は成り立たない。

寸法=着用姿 を考える

KOTAROでは「寸法=着用姿」だと考えている。
前項で比較した2人の女性は、年齢が違う、着方が違う、という点がポイントになっている。

着物の形は全て同じ形である。
必ず身頃があり、衿があり、衽があり、袖がある。
衿の無い着物は無く、衽の無い着物も無い。また袖の無い着物も無い。

着物をどう着るのかでその人らしさを表現している。
ゆったり着用する人、身体にピッタリ沿わせて着用する人、衣紋をたくさん抜いて着用する人、帯位置を低くしてシャープに着用する人、衿合わせを深くしてはんなり着用する人、など。色々な着方があり、着方を変える事で自分らしさを表現している。

同じ体型でも、着物の着方が違うならば、その着方に合った寸法が必要であると考えている。その着方に合った寸法にすることで着心地の良さ、着用までの手間のかかり具合がまるで変わる。シワの入り方、ドレープの入り方も変わる。より自分らしさというものをクリアに表現できる。

着方が決まったら、「寸法=着用姿」にするのが最善だと考える。

写真で比較する着用姿

下の写真は、同じ体型の人が衣紋を抜いて着用した場合と衣紋を抜かずに着用した場合の比較写真である。
衿合わせの好みは同じとした場合、どちらの着用姿が素敵かという問題ではなく、衣紋を抜いて着用するのならそれなりの寸法で着物を仕立てることが必要であり、衣紋を抜かずに着用するのであればそれなりの寸法で仕立てる必要があることをお分かりいただけると嬉しい。

写真の着物は、衣紋を抜いて着用するための寸法で仕立ててあるため、衣紋を抜かずに着用すると脇に横方向のたるみが現れている。横方向のたるみは、私の好みでは無いためこのような場合は仕立て寸法を変更している。

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この記事を書いた人

KOTARO

現役和裁技能士が「仕立てと着姿」をテーマに、どんな寸法で、どんな仕立てをすると、どんな着姿になるのか、自分自身の身体で検証しています。