今年のテーマは「 長襦袢 」
これまでに5枚の長襦袢を仕立てました。これらの長襦袢は少しずつ形が違い、その形に応じて長襦袢の寸法も変えています。今回は、長襦袢の「竪衿巾」に注目して形の違いを比較したいと思います。

竪衿とは
通常長襦袢には、着物で言う衽のようなものが付いている。これを「竪衿」と言う。
衽と竪衿の違いは、その仕立て方法にあるが詳しくは割愛する。
竪衿巾に注目した 長襦袢 の形の比較
① 竪衿巾2寸(グレー格子柄 長襦袢 )
最も一般的で標準寸法とされている寸法。

② 竪衿巾2寸5分(紫麻の葉模様の 長襦袢 )
通常よりも少し広めの寸法。竪衿巾を広くすることで身体を包み込む衿を作ることができる。

③ 竪衿巾2寸5分(薄紫松葉柄長襦袢)
上の長襦袢と同じ竪衿巾。違いは衿巾・前巾・後巾。

④ 竪衿の代わりに衽が付いている(グレー無地長襦袢)
竪衿の代わりに衽をつけて長襦袢を仕立てることを「衽仕立て」と言う。衽仕立ての場合、通常衽巾3寸で仕立てることが一般的だが今回はあえて着物と同じ寸法(衽巾4寸)で仕立てた。

⑤ 竪衿無し(白絽麻長襦袢)
竪衿を付けずに仕立てた長襦袢。竪衿が無くても長襦袢の形に仕立てることは可能で、着用も可能。どちらかと言うと細身の形にお勧めしたい形。

なぜ竪衿巾に注目するのか
今回は長襦袢の「竪衿巾」に注目しその形の違いを比較している。なぜ竪衿巾に注目するのか。その理由は、竪衿巾が変わると、長襦袢の前巾・後巾・竪衿下がりなどの寸法が連動して変わるからだ。長襦袢の前巾・後巾は、着物の前巾・後巾から割り出すのだが、割り出すためには竪衿巾が決まっていることが前提になる。
その他に注目してほしい点
- 裾合わせ具合にも注目してほしい。“上前が身体のどの位置までかぶっているのか”である。右足の太ももが見える程度の物から右脇まで深くかぶっている物まで様々である。
- 左の脇線に注目してほしい。脇線が裾に行くほど前身頃側へ捻れて来ている。
5枚の長襦袢は竪衿巾の他に、前巾・後巾・竪衿下がり・繰越・衿の付け込みなどの寸法が違う。このことから、竪衿巾と決めた後、どんな前巾や後巾で仕立てるのかにより着心地が変わることがわかる。
長襦袢 の着付けについて
上写真の5枚の長襦袢は、私とほぼ同じ体型のボディーを使用し長襦袢を着せつけた。衣紋の抜く量と衿合わせの角度はボディーに印を付け、同じ位置で着付けをしている。
まとめ
長襦袢の寸法を決めるためには、まずはじめに“どの形の長襦袢を作るのか”を決めなければならない。お店や仕立て屋は、“うちはこの形で長襦袢を作ります”という前提をすでに決めている。だからお客様とのやり取りは、“長襦袢の寸法どうしますか?”からスタートする。長襦袢の場合は寸法を考える前に“どの形の長襦袢にするのか”を決めることが先にある。
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